久々にひよちゃんネタを書こうと思ったのは、初夏のさわやかな風と共に、いつもの場所にいつものツバメたちが帰って来ていたからです。秋冬のあいだ留守をしていたお宅の再建工事をせっせと夫婦揃ってしている姿は、本当にほほえましく感じます。願わくば、田んぼの泥ではなく、もう少しキレイな素材で巣を作る習性があったらいいのになあ、とは思いますが。
泥を調達に行ったり、疲れて近くの電線でひと休みしている時に私が留守宅を見上げていると、「ツイー、ツイー」を鳴いて不審者を牽制します。これが、巣からこぼれんばかりにヒナたちがいるタイミングで見上げたりしていると、ツバメのおかあさんとおとうさんは、小さな体で精いっぱい私の近くを飛び交って威嚇し、こどもたちを守ろうとします。大丈夫だって、ちょっと写真を撮らせてもらうだけだから。
さて、我が家のひよちゃんは、贅沢とは言えず、ふんだんではないかもしれませんが、毎日のご飯に困ることなく育っています。私が外出から帰宅するまでご飯を食べずに待っているのには少々閉口しますが、飢えて衰弱したり命を落とすようなことは、今のところ起こっていません。
それどころか、これら小鳥一般のこととして、殻つきのミックスシードをボチボチいわせながら殻を剥いて食べるのは実に嬉しそうなのですが、相当な量のシードをこぼしてしまうのは困りものです。毎日ケージのお掃除をしていて、「一日たったエサは潔く捨てましょう」と飼育本で読んだことを思い出し、いつも残念な気持ちになっていました。小さな体の構造上仕方のないことなのですが、犬猫のように朝晩決まった時間に食事をし、出されたものは全部平らげるようならどれだけよいか、と思わないではありません。
ここで私の親バカぶりを白状すれば、ひよちゃんは、朝は食パンやサフラワーの種の殻を剥いて、夜は大好きなキュウリやご飯を一粒ずつ、そして小さな粟の実やその他のミックスシードを、おかあさんの手から食べさせてもらっています。どういうタイミングで、またはどんな声掛けでご飯がもらえるか覚えてもらうのも、しつけや芸の練習になります。
それはひよちゃんと私の至福のひと時なのですが、ひよちゃんがあの鋭いくちばしでがっついて食べる時など、しばしば私の指先がざっくりささくれたカギ状に傷つきます。時に血を見ることもあり、「イッタイんだよ、もう!」と叱っても、その意味はひよちゃんにはわかりません。少しビクッと驚き、時に気まずそうな顔つきもするのですが、すぐに無邪気に「ご飯、ご飯」とねだってくるのが常です。
ある時、スマートフォンや駅の券売機のタッチパネルの反応が悪いのはなんでだろうとかねがね不思議に思っていたのが、ひよちゃんのくちばしのせいで指先がガサガサになっていることが原因なのではと気がつきました。スマートフォンのログイン時の指紋認証もうまくいかないことが多々あります。きっと銀行ATMの指紋認証やその他の手続きでも、私は指紋のない女扱いになってしまうのかもしれません。
ツバメやその他の鳥のヒナたちは、おかあさん鳥やおとうさん鳥が一度口に含んで咀嚼した餌を口移しで食べさせてもらいます。厳しい自然界で生き延びるため、一緒に生まれ育った兄弟であってもより強く大きく育つため、ヒナたちはものすごい勢いで運ばれてきた餌を食べようと親鳥のくちばしにその小さなくちばしを差し入れますね。
きっとおかあさん鳥やおとうさん鳥のくちばしの中も、日々小さな傷をこしらえているのではないかと想像します。我先にたくさん餌を食べようとねだるヒナたちを嬉しくも頼もしく思いつつ、親鳥たちは日々その痛みに耐えているんだなあと思うのです。
子供たちが強く立派に育つよう、おかあさんは、いつの世もどこの世界でも、小さな痛みを幸せと思いつつ子育てをしているのだと感謝の気持ちが溢れてきます。世の中のすべてのおかあさんに、ありがとうと、もう少し頑張ってと、よろしくお願いしますねと。
今日、5月8日は、母の日。